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白い松露とジュランソン [フランス 白]

山から掘ってきた泥の塊が

100g5万円!!

ということは10g5千円!! 

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レストランだと一体それがいくらになるんだ。

なんという悪徳霊感商法。

 

ガラスの容器に入れて宝石のように運んできても

隣のテーブルが歓声を上げようが

今年は騙されない。

 

強い意志を示せ。

権力に盾をつけ。

が、しかし

なぜに白い塊を目が追っているのか。

 

呼吸が浅くなっているぞ。

 

 

17歳の、恋に目覚めた時のように

ラミレスギターを手に入れるために初めてローンを組んだ時のように

心の震えがぼくを締めつける。

騙された女の香水の香りがよみがえる。

近づいてくるモニカ・ベルッチが胸のボタンに手をかけている。

 

 

そうさ、ぼくはすでに悪魔と契約をしていたんだ。

この淫らな幸せのために

魂を売ってしまったんだ。

 

悪魔の使いよ、

そのガラスの蓋を取り、

目の前のぼくの皿に

その「泥」の塊を削ってくれ。

 

 

腐臭と獣の臭気、

悪魔の笑いと天使の吐息。

100万本のバラと100個のにんにく。

 

ハードボイルドと官能小説。

ジプシーバイオリンとフラメンコ。

娼婦の館と天国への階段。

 

そして肉体と脳と、精神がひとつに溶けて毒される。

はやくグラスにジュランソンのヴィンテージワインを注いでくれ。

あゝ、なぜにこのワインは

蜜の中に松露が溶け込んでいるのか。

松露とワインの錬金術。

 

やがておだやかな幸福が 全身を満たし、

肉体と魂の幽体離脱。

 

ぼくが死んだら トリュフの産まれる樫の木の根元へ

埋葬してください。

 

 

のんとろっぽの白トリュフ祭りは10月25日~!!

ほぼほぼ原価でお出しします。 

↓↓

http://non-troppo.com/event.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


満月とアマローネ [イタリア 赤]

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グラスを拭き終えて

忙しかった一日が終わり、窓を開けると

大きく白い星と並んで満月。

台風一過、澄んだ夜空に

恐いほどの美しさ。

 

いにしえの人は美しさの極みを

「雪月花」に例えた。

まさにそうだろう。

 

しかし、月の美しさは

目には見えても手に届かない分

遥かな想いと憂いを誘う。

 

 

今日一枚のハガキが届いた。

エアメール

「お元気ですか?」

「私は今、イタリアに旅に出ています。」

 

 

Tさん、一年前の電話の声、

いつもと違う沈んだ声。

「私、会社を退社することになりました。

 長いあいだお世話になりました。」

「そうですか。これからどうするんですか。」

「 なんか疲れてしまって・・、

 しばらくのんびりしたいと思います。」

あれから何故か僕からはTさんに連絡することがなかった。 

 

 

「360度、ぶどう畑。 最高の気分です。」

最高の気分か・・・・。

元気でよかった。

ハガキの裏の一面のぶどう畑の写真に

Tさんのいつもの笑顔がよみがえった。

 

 

ボトルに残ったワインをグラスに注ぐ。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ。

貴高い香りにロマンが溶けこんでいる。

 

疲れと酔いが回った頬に

夜風が気持ちいい。

秋だ、旅か。 いいなぁ。

 

頭の中に音楽がゆっくりと鳴りはじめた。

メンデルスゾーン「無言歌集」の「ベネチアのゴンドラの歌」。

ギーゼキングのピアノ。

8分の6拍子、揺れるゴンドラにあわせて

櫂にあたる水の音。

ため息のように繰り返される旋律・・・。

満月の明かりが波間にゆれている。

 

ゆらゆらとイタリア旅行の記憶がよみがえってきた。

ローマの広間、フィレンツェのフラ・アンジェリコ、

ベネツィアのレストラン・・・。

 

今夜はもう遅い。

あとひとくち、

グラスの中に揺れる月を見ながら

アマローネのビターな苦味がきえるまで

ゴンドラに揺られていよう。

 

Tさん、Buona notte.

おやすみなさい。

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シェリーとビスケット [シェリー]

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ぼくはギターを愛している

ギターの音色はまっすぐに胸の奥にひびく。

 

「アルハンブラの思い出」を作曲した フランシスコ・タレガの逸話が好きだ。

ある日タレガが練習していると 幼い息子がこう告げた。

「パパ、おもてに怖い人がいるよ。」

タレガは練習の手を止めしばらく考えて言った。

「その人にお入り、といいなさい。」

 

みじめな格好の男がおずおずと入ってきた。

「お許しくださいませ。きれいな音が耳につきまして・・・・。」

「あなたは音楽が好きなんですね?」

「さいでやす、旦那。」

「急がないなら聴いていきなさい。」

家から家へと施しをねだって歩く物乞いの男に タレガは椅子をすすめた。

 

一曲弾いたのち、 両目がすっかり潤んだ客人に

数枚のビスケットとシェリー酒をすすめた。

 

男は感謝と幸福に満ちて 音楽に酔いしれた。

 

上流階級に暮らす人も腰掛けた、

その同じ椅子に物乞いもまた、座ったのです。

 

マエストロ・タレガのギターは全ての人に

同じ芸術、喜び、感動を伝えました。

 

来る人に喜びを 去る人に幸せを

 

この椅子に座る人にも 喜びと幸せを与えられるだろうか。

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